「緑色の坂の道」vol.3913

 
       WILL-O-THE-WISP 4.
 
 
 
■ 国際埠頭の傍で車を停め、外に出てみた。
 路肩にアイドルしているのは市場が開くのを待つトレーラーの一群である。
 ETCの割引の関係で、時間帯がずれている。
 時々真っ黒な排気をサイドから吐き出している車体もいて、それは軽油の質なのだ。
 霧の中に突っ込んだかと思った。
 
 
 
■ 男たちは正月まで家に帰れない。
 澱のように殺気が溜まる。
 その後、車を出すのだが、決して近づいたり邪魔をしたりはしない。
 こちらは部外者だからである。

「緑色の坂の道」vol.3912

 
       WILL-O-THE-WISP 3.
 
 
 
■「JAZZ WILL-O-THE-WISP」というのはAL HAIG TRIO の名盤である。
 名盤というのは大体密度が濃いものだが、これも例外ではなく、少しだけ身構えて聴く必要がある。
 JAZZの世界は何処か求道的なところがあって、それも捨てたものではないのだが、私の場合、35を過ぎた辺りから綿パンのプレスは気にしなくなった。

「緑色の坂の道」vol.3911

 
       WILL-O-THE-WISP 2.
 
 
 
■ 余ったタクシーの群れを抜け、お台場へのアンダーを流す。
 新型のBMW製MINIが交差点で煽ってきた。
 ナンバーが地元ではなく、ONEとエンブレムにあったから新車なのだろう。
 私はつんのめった形で走る古いMINIが好きだった。
 たとえ5000キロ毎にグリスアップをしなければならなくても。

「緑色の坂の道」vol.3910

 
       WILL-O-THE-WISP.
 
 
 
■ 作品とは不思議なもので、それが10年経っても問題がないことがある。
 
 
 
■ 疲れたので地下に降り、港の辺りに車を流した。
 いつものコースである。
 暗闇坂でコンビニに入り、新しい煙草とお茶を買った。

「緑色の坂の道」vol.3908

 
       ディア・オールド・ストックホルム 2.
 
 
 
■ 青山界隈の路地を、マイルスのバラードばかりを聴きながら走った。
 一方通行が多く、慣れないと迷う。
 低層のいいマンションがあって、隠れた事務所にはもってこいなのだが、来客の車と恐らくはゴミ収集が厄介かとも思われた。セキュリティも少し古い。
 
 
 
■ 昔この辺りに友人が住んでいて、羨ましく思ったことを覚えている。
 奴の親父さんがこの間亡くなって、離れていたものだから私は電報だけを打った。
 後でメールを送ると、なんの感慨もないという。
 次は俺達なのかと思うだけだ。