ウナセラディ、東京。
■ 私の車の中には、大体ピーナッツのCDが入っている。
聴くのはそのときによって違うのだが、国道246から赤坂陸橋をカーブして、さて日比谷方面に下ろうかという雨の夜、ついボタンを押している。
信号で停まると、恥ずかしい気になることもあった。窓を閉めたりする。
■ 裕次郎の「憎いあンちくしょう」という映画には、出来たばかりのアパートメントが出てくる。
今で言えば麻布界隈に建っている高層マンションのようなものだろうか。
当時、圧倒的にモダンであったという。
今眺めると、西部劇の酒場にも似た安普請で、冷暖房も単体のそれであった。
映画については、書きたいこともいくつかあるが今は省く。
つまり東京タワーがまだ点々の電球で飾られていた頃の夢であったともいう。
■ そんなことを思い出したのは、カポーティの「ティファニーで朝食を」の原作を棚から探していたからであった。
映画の中で、ヘップバーンが歌う「ムーンリバー」は吹き替えである。
洒落てはいるがどこか幸の薄い、ひとりの女性の半生のことをぼんやり考えたりもする。