水をくるむもの。
 
 
 
■ というコピーを昔、書いたことがある。
 このところ外で飲む機会が多かったからか、薄い風邪が身体に入り抜けてゆかない。
 大体、傘を差さないで歩くからである。
 夜半、悪寒がきてびっしりと汗が出る。そんな日が暫く続いた。
 
 
 
■ ある通信社の編集委員に誘われて、六本木ヒルズ近くにある大学の読書会に参加する。鈴木謙介さんの「カーニヴァル化する社会」(講談社現代新書)というものだ。
 この本の後段はなかなかの密度で、私は線を引きながら行間にあるいくつかの視点の角度を測っていた覚えがある。
 壊れかけたソファに横になりながら、時々天井を眺めて。
 読書会自体はMK(マーケティング)に振ったものだったが、大筋の客層が企業人であるからいたしかたのないところなのだろう。
 鈴木さんはまだ29歳。この次にくるものを今模索している筈で、今の日本社会がどちらを向いてゆくかを、若者の目線から注意深く分析してゆくことになる。
 社会学というのは様々な学問の成果を吸い上げて成り立つものだが、私はこの本で指摘されている自我モデルの変化に、精神医学的な要素を含ませてもいいような気がしていた。
 この項、次第に厳密になるのでこのあたりでやめる。
 
 
 
■ その後、居酒屋で二杯。軽い総括。
 三十代の連れと別れ、そのまま歩く。
 先日、CEOではなくなったというIT会社の彼がこの辺りに住んでいることを思い出し、携帯の番号を捜すが登録していない。
 市場主義者の甲羅で武装した、いい奴であると私は踏んでいた。
 小雨になる。
 タクシーを拾って、虎ノ門のホテルへと流れた。