水を盗んだ。
 
 
 
■ 先日なんというかの彼らが集まって酒を飲んだ。
 その後、大使館傍にあるホテルへゆき、ボトルが入っていたよなと思ったが店は満員だった。仕方なく本館の方へと歩く。
 一番安いの、と力説して一本を入れてもらうのだが、スコッチのフェアはいい背広一着分の値段がする。最近ではドーメルもいけますな。
 黒服が近づいてきて説明をしてくれる。
 なんとかしてくれて、そうでもないものになって助かった。
 
 
 
■ 昨日は確か牛丼を食べていたのだが、本日は無駄のようなことをする。
 かつて山口瞳さんが、連日の酒で腹を壊し、下着が汚れるということを書いていた。
 酒が好きな人ならお分かりだろうが、ガスのつもりでいてそうではないことがまま起こる。
 ゆるやかに冷ややかなものが広がる。
 山口さんは深夜、その下着を洗う。
 銀座で飲んでいた一杯の、数分の一の値段なんだがなと思いながら、家人に始末をさせる訳にもゆかない。
 
 
 
■ 仕事を持っている妙齢の方ならお分かりだと思うが、人生は横モレするものである。 何故かは知らぬがそのような月の按配には、意識が薄くなってしまう。
 と、どうでもいいことに話が流れた。
 私はホテルのバーから、小さな水のボトルを二本貰い、一本を若いものに渡している。 何本飲んでもお勘定は一緒だからという、牛丼紅生姜の延長でもあった。