器と中身。
 
 
 
■ 緑坂は難解である。
 という声を古くからの読者から貰った。
 古くからであるから、実は分かっているのであるが、いや一般的には注釈がないと全部は理解できないでしょう、という意味であるらしい。
 最近であれば「西脇」先生であるとか、チャンドラーだろうか。
 
 
 
■ 例えば、マティニを頼むとする。
 後ろを伸ばして、マティニーと呼ぶ場合もあるが、この辺りは好みなのでどうでもいい。ウィスキーとウィスキィの違いのようなものだ。
 黒服が、ジンは何にしますか、と尋ねる。うちは○○を使っていますけれども。
 じゃ、これを使って、などと私も答えるのだが、よく考えるとこのカクテルはジンの銘柄だけで決まるものではない。
 肝心のベルモットをどれにするか。
 何故聞かないのか不思議なのだが、つまりは単なる儀式なのである。客の知識を試しているかのような。
 最近そういう店が増えた。
 
 
 
■ 十年前の私であれば、ここで「ニッカの47度」とか言っていたものだ。
 最近はめんどうなのでしない。
 第一、バーテンが自分よりも年下になってしまっている。
 考えてみると、警官もだ。