雨ふたたび 2.
 
 
 
■ バブル盛りの頃「ボーダー」という漫画が流行った。
 私も好きでまだ全巻を持っているが、原作者の描くその後の作品世界は、その後急速に失速してしまった。
 深層心理や集合的無意識、いわば神秘主義の方向に流れてしまったからだろうと私は踏んでいる。名前は控えるが、ラジカルな言説で売っていた作家の何人かも、そのように穴の中から世界を呪ったり語ったりするようになり、こちらの胸に言葉は届かなくなってしまった。
 
 
 
■ 無理したカリスマというのがもし居るのだとして、彼は自分の人生を演技化する。
 物語に擬する訳だが、物語に飢えた一部の女性達には受けがいい。
 人生も歴史も、あるいは文化そのものも、決して物語の世界に収束できるものではないと知った中年男たちは、たいしたものだよねと言いながら、旨い焼き鳥で一杯の方を選んでいる。