東京の印象 2.
 
 
 
■ 振り返ると、今ここでえらそげにあれこれ書いていられるのは、ほぼ先輩の方々の背中を眺めてきたからだろうと分かる。
 ここはこれが旨いんだ。
 せめて靴下だけは新しいものを履け。
 
 
 
■ 板前さんに生意気な口をきいてはいけない。
 客は客だけれども、金を払えばいいというものでもないのだと。
 かといって卑屈になることもなく、黙って一杯か二杯を飲み、あるいは本日一番旨いものをさっと食べ、現金で払って戻りなさい。
 旨いもので腹を一杯にする必要はないのだ。
 
 
 
■ 先輩のいた時代というのは、いわゆるその分野のプロがいた頃合いである。
 彼らはプライドを持っていた。
 であるから若造に、これをやってみろよ、と分からない程度に投げ出してくれた訳である。
 つまり、それは機会であった。