かつて不良だった市民 3.
■ 中華街の傍のマンションに住んでいたことが自慢の先輩のことを覚えている。
先輩といっても車方面のそれで、当時彼は白いBMWの2002 AT に乗っていた。
車屋などに昼日中、顔を出す。
150から車体が沈んでゆくんだぜ。
安定性はやっぱりドイツ車だよな。
と、ダンヒルのライターで洋モクに火を点けていた。
■ 背が高いので、英国調のスーツが様になる。
そのマルニイを買わないか、という話もあったのだが、相場より少し高いので躊躇っているうちに夏が過ぎた。
暫くしてまた顔を会わす。彼は外側ヒンジのミニ1000に乗っていた。
定番と言われるマフラーが白い。
キャブを載せかえる。ミニの場合にはSUである。
奥様が乗るからだと言って、仕方なくATなのだとぼやいてもいた。
奥様は何をしているかというと、とある病院の保険の点数付けである。
彼は、レントゲン検診の車を運転するのが仕事だった。
■ バブルの頃、リゾート・マンションを買ったという話を聞いた。
そこへ、BMWの6シリーズで出かける。
おまえもこいよ、と二度ほど誘われたが、当時私は旧いドイツ車に乗っていたのでどうしたものか迷った。
数年たって消息を聞く。
理由は定かではないが、運転手を辞め、彼はリゾート・マンションに引きこもっているのだという。
教えてくれたのは、セドリックの黒塗りにセットで80万円ほどするタイヤとホイルを付けていた宅急便の若者で、私が自動販売機の前に立っているとトラックが停まったのだ。