何処にありや去年の腹。
 
 
 
■ 上村一夫さんの代表作は、「同棲時代」であると言われる。
 今読み返すと林静一さんの「赤色エレジー」と並列で眺めるべきものであるかと、林さんの連載が載っていた「ガロ」を思い出している。
 七十年代の文化やその他については、思うことは多々あるのだけれども、残念ながら綺麗に歳をとられた先輩が思いの他少なく、ご高説を承るという按配になることが多い。
 
 
 
■ 関川夏央さん原作で、絵師が上村さんの作品に「ヘイ、マスター」というものがあった。
 私は初版で持っている。
 西巣鴨のガスタンク傍に住む、ゲイの中年マスターが主人公の探偵ものである。
 関川さんの原点、「事件屋稼業」の変奏曲のようなものだった。
 たまにぱらぱらと読み返すのだが、そこにある部分的に硬いユーモアのセンスは、偏差値とは関係なく、無駄な時間をうんざりしながら過ごさないと分からないものであるなと考えた。