白南風。
 
 
 
■ 蝉の声がする。
 せっかちだとは、いえない気分だ。
 出窓から外を覗くと、緑の色が濃くて濁っている。
 
 
 
■ 人生に正面からぶつかるべき時期というのがあって、男の場合、それは四十歳前ではなかったかという気がする。
 これでいいのだと根拠もなく思いながら、何日も徹夜をくりかえす。
 もういちどやれ、と言われれば勘弁してくださいと言いたくもなるが、なんのためにそれをやっていたかも、半ばは忘れてしまっている。
 南から風が入ってきた。