薔薇の原価 3.
■ クラシック音楽にそう強い訳ではないが、フルベンのじいさんの指揮したものは好きだ。
東京の冬のような音がする。
■ 例えば随分と前のクリスマスの夜、確か細かな雨が降っていた。
今のように青と白の電飾になる前、点滅の回数が緩やかだった頃、表参道の少し先に車を停めた。
指先が絡まる訳だが、そんなことをするのは、やはり時期だったからだとしか言いようがない。
■ 東京は今、埠頭の傍まで車で入ることができない。
埋立地の鍵のかかっていない柵をこえ、遠く羽田の灯かりなどを眺めて漠然とする。
捨ててある車の中を覗き、まだ使えるのに、と思っていたこともあった。
弾奏が落ちていたことがあって、恐らくモデルガンだろうと思うことにした。