「夜の魚」

「夜の魚」一部 vol.8

 
 
 
■ 横羽は路面が荒れている。ダン、ダンと繋ぎ目で車が揺れる。煙草を吸っていないことに気付いた。どのへんだろう、黒い雲の後ろでちらちら炎がみえた。
 横浜駅を過ぎると高速コーナーが続く。ステアリングを傾け、減ってきたタイアがいつ流れるか神経を払っている。トンネルに下ってゆく。夜の中にまっすぐな光があって、なんなのか理解できない。前をゆく新型がブレーキを踏み、かわそうとすると後ろが流れた。車は横になって壁面が近づく。
 光は海沿いの公園からの夜を照らすスポットだと気付いている。

「夜の魚」一部 vol.7

 
 
 
■ 部屋に戻り、壊れたソファに横になった。暫く眠ったのか、遠くで虫が鳴いている。電話なのだ。受話器を一度落とし、もう一度拾うと、どこか覚えのある声がする。葉子だ。そう名乗っている。海岸通りにいて雨が降っているという。
 私はポロシャツに着替え、車に急いだ。天現寺まで廻り首都高速に乗った。
 蒼白い塔が左手にみえている。近づいてゆくと、夢をみているような錯覚に陥る。夏のタワーだ。ちらりと海がみえ、高速一号線に入る。
 鈴が森で事故があった。赤い発煙灯が何本も落ちている。白い煙が低く広がっている。遠くまで見通せない。そう思うと雨に入った。