スウィングトップ 4.
 
 
 
■ 16号から357号、東京湾岸道路に抜けて本牧に戻ろうとする。
 昔、この辺りを意味なくうろついていたものだけれども、他府県ナンバーはすぐやられた。暗いところには駐められない。
 できたばかりだという高架を制限速度をわずかに下回って昇る。
 ちらりと海の色が見えて、鉛というよりもオレンジと黒の縞である。
 ぽつぽつと雨になった。
 

 
■「乾いた花」という映画があって、舞台は横浜だっただろうか。
 当時は随分モダンだっただろう、ルノーのカラベルという車が出てきていた。リアにエンジンの載っていた奴だ。荒筋はほとんど覚えていない。
 池辺良さん演ずる中年ヤクザ者の風情が妙に色っぽく、陰の中に艶があって、暗がりで鈍く光っているようにも思えた。
 私は低く音楽を聴いていた。ストーンズの初期のものと、ピーナッツのご当地歌謡である。ピーナッツの歌は通して聴くと、なかなか馬鹿にできないものなのだ。
 
 
 
■ 広い駐車場のあるコンビニでバナナを買ってみた。
 一本売りしていたのである。
 高校生だろうか、女性店員が地元である。スィングトップの襟を立て、小雨の中でバナナとコーヒーを求める自称中年後期の男をどう眺めたのか、今になって客観的になろうとしてもあまり意味はないのだろう。
 バナナの皮を剥き、食べながら海沿いの道をゆっくり走った。