Cleopatra's Dream
 
 
 
■ すこし寒いくらいの、弱い風のある夜。
 上着を羽織ろうか、と迷う頃合、黒いサーブの方と立ち話した。
 海の近くの駐車場で、その方も一人だった。
 

 
■ 散歩ですか。
 散歩ですね。
 そこから旧い車の話になって、お決まりのメンテの苦労と部品調達の按配である。サーブは86年くらいの3ドアで、適度にやれてもいるがホイルに傷もない。
 あの頃、この車が好きだったなと自分が30代だった頃を思い出すのだが、それは感傷とは少し違う手触りで、毎日何を食べていたのか世を知らず。
 
 
 
■ 私はパウエルの演奏よりも、クロード・ウィリアムソンのそれが好きである。アルバムの5番目だったろうか、いかにもマイナーな演奏が入っていて、これでどうしろというんだ、という感じもするのだが、大抵は繰り返して聴く。