別の夢 2
 
 
 
■ もう20年近く前に書いた「夜の魚」の中で、主人公のコピーライターが、吉川という男と会話する。吉川はやや遅れてきた団塊の世代の末尾、もしくはパロディである。
 
「私は別のことを考えていた。長いこと、あらかじめ答えが出ているような気がしていた。余熱のようなものは根強くあったが、そこから先に進むことはなかった。吉川の言う、『まともに勤める』という言葉からすれば、私も随分逸れていることになるのだろう。それは時代のせいばかりじゃない」
 
「信じてないんだ」
「何を」
「なんだろうな」
 
 
 
■ 小説の中のコピーライターは、いわゆる「シラケ世代」と呼ばれる年代だろうか。世代論というのは一般に詰まらないものだが、こうして書いていてもやや鬱陶しいものがある。