砂の岬。
 
 
 
■ 60年安保の頃、皇居前のデモの後に一本の折れた傘が落ちている。
 モノクロームの、へし折れた傘である。
 撮ったのは土門拳さんで、若かりし頃の山田洋二監督がその写真について書かれていたものを読んだ記憶がある。
 失礼ながら、文章それ自体にはあまり感心しなかった覚えもあるから、監督が語られたものを誰かが構成したものだったのかも知れない。
 デモそれ自体ではなく、雨の中にうち捨てられているへし折れた傘。
 監督はそれを写真家の眼だと評価している。
 
 
 
■ 同時代に青年だった訳ではないので、後にいくつかの経験や知識から類推していく以外にないのだが、例えば「アカシアの雨がやむとき」という歌は、60年代安保世代の挫折感を象徴していると言われた。
 今聴いてもいい歌である。
 その後東京オリンピック。
 講和を経て、既に55年から高度成長は始まっていたが、その中仕切りと言ってもいい頃合である。