走るコタツ。
 
 
 
■ あるとき訳あって軽自動車に乗っていた。
 訳という字は「事情」と書いた方がいいのかもしれないが瑣末なことである。
 車は1000キロばかりのほぼ新車で、OEMで提供されているという。
 たったかたったか、独りで、または数人で走る。
 ホテルに乗りつけたりもする。
 
 
 
■ 軽のシェアはほぼ40%に近いとされているが、全国平均ではなく地方都市などを軸に眺めれば、この割合は更に増えるのだろう。
 仕事や買い物にいくのに車が不可欠な土地というのは多いもので、一家に車は数台ということも珍しくない。とりたてて贅沢品ということではないのだった。
 これと車高を落として19から20インチのホイルを履いたミニバンがその土地の王道である。サンダルをつっかけ、なるべくルーズにいこうとするのが髭の生えたクールとされた。片手にはスマホである。帽子も忘れない。
 サンダルは水撒きにはいいけれど、または自転車にはいいけれど、どうしたもんであろうか。
 私は履きこなしているとはいいがたい。音の歯切れが悪い。
 
 
 
■ ハンドルに太いカバーをかけ、なぜならエアバック付いているから、よくできた電動パワステをくるくる廻し、Autoのエアコンを最大にして炎天下にいる。
 渋滞の中で、旧いメルセデスや適度に改造を加えた英国製のミニが並ぶこともあった。
 がんばってますね、と思って眺めるのだが、この状況では運転している男性がやや変わり者に思える。なぜなら、睨み返されたからである。ぷい。
 ふうむ。そうすると、もしかすると偏屈なのかも知れないな、という偏見が一方で浮かぶ。
 コタツから世界を眺めると、そうなのである。