君は、人を見る目がないんだ。
 
 
 
■ 投票日の夜、昔の映画などを眺める。
 こういう時は特別名作と呼ばれるものではなく、どこか力が抜けたものの方が望ましい。
 ということで、ジャック・ニコルソンの「黄昏のチャイナタウン」というのを流していた。原題は「THE TWO JAKES」
 
 
 
■ 観るのは何度目かなので、粗筋などはどうでもいいのである。
 ところどころ飛ばす。
 やや太ったニコルソンの毛の薄さと、この頃から結構な味を出していたハーヴェイ・カイテルとのやり取りがいい。
 完全に整備された空冷6気筒のエンジン音のように、とことん乾いたロスの街。街というより、とりとめもなく広がる砂地なのだけれども、そこに棲む男たちの薄くとぼけた感傷の度合いがいい。
 ヒロインはメグ・ティリーが演じていた。
 当時、清純派と呼ばれた女優さんだが、個人的にどうもこの手のタイプは苦手である。植物的でしかも繊細な感じというのは、大抵が嘘なのだ。
 歳を取ると自然食に凝ったりハーブの栽培などに忙しく、相方はなかなか不遇な目にあう、ということがままある。
 
 
 
■ ラストで、かつて惚れていた女の娘にコナをかけられる。
 その時のニコルソンの苦しそうな表情がいい。
「愛の狩人」辺りだったら、または「郵便配達は」の頃まででも、すぐに押し倒していただろう彼が大人になったのか。ただ老けたのか。
「君は、人を見る目がないんだ」
 この後に「俺もだけどね」と続く筈なのだが、言わなくてもその通りなので映画では省かれていた。