Blues-like 7.
 
 
 
■ 葉子という女を拾ったのは梅雨の切れ間の日曜の夜だった。
 私は仕事を終え、部屋に戻るところだった。車を停め、煙草を買おうと歩道を渡った。
 バスを待っているのか、若い女が緑色の看板にもたれている。
 とうにバスの時間は過ぎていた。廻りに人影はない。
 販売機の前で腰を屈めると、そのまま女の姿が崩れてゆくのがみえた。
 送ることになったのだけれど、びっしりと汗をかいている。
「ごめんなさい、よくあるの」
 バス停で倒れることを指すのか知らない。
 湿度のなかに青い匂いが混ざっている。
 常緑樹が花をつけている。
 彼女は私の部屋のベットに横になることになった。
「シーツをかえたのね」
 納得したでもなく、彼女は寝息を立てた。
 薄く体臭がする。足首が汚れている。何日か街を歩いていたかのようでもある。暫く眠っていなかったのだろう。
 私は白いベルモットを一杯嘗め、目覚ましを傍に置き、暫くぼんやりして壊れかけたソファに躯をまるめた。