美しい瓦礫。
 
 
 
■ いつだったか渋谷駅で、瓦礫を写したパネルが並んでいた。
 遠目に良質な写真だったので私は近づいていく。
 おそろいのトレーナーを着た若者がパンフを配っていて、ひとりはアニメの声優のような声を出しアンケートに答えてくださいと語尾を微妙にあげる。
 私は、声優「のような」声というのが生理的に嫌いなので、わるいけど暫く見させてくれないかと返事をした。
「」をつけているところで、色々と察していただきたい。
 
 
 
■ フルサイズ近いデジタル一眼のRGBプリントで、プリンターの色調整は正確でもなく、また撮られた方々がどういう「モード」で色調整などをされていたかの記録はない。
 写真としては主観的だという批判を浴びるものかも知れない。
 が、主観的でない写真というのは本質的には有り得ないので、その辺りはどうでもいいのである。
 
 
 
■ 瓦礫を美しく撮ることは可能である。
 現代美術のひとつとして、と例えば作家が言ったとしても、それはその通りであって、流された方々は何も残していないのである。