Diamant 13.
 
 
 
■ くたびれた中年男があらゆる困難にもめげず信念を貫いていく、という主題の映画があって、一定のファンがいる。
 くたびれていない男なんていないからだが、邦題「いずれ絶望という名の闇」という作品もそのひとつだった。
 何もしたくない夏の夜、適当に棚から引っ張り出してきて眺めていた。
 それにしても、これでもかというような題のつけ方である。
 
 
 
■ 主人公は鼻に大きな瑕のある刑事。
 離婚暦もある。その癖妙に女にモテたりするところが不思議で、ラストでも結局は女性に助けられる。しかも助けられて当然のような顔をしている。
 最近、ハードボイルドというかノアールの類は、いかに女性をリアルにみせていくかというところにポイントがあるようで、知的な仕事は女性の方が向いているという先進国共通の前認識で作られているかのようだった。
 
 
 
■ プロットに密度はない。
 描写もどこか甘く、決して名作とは呼ばれない種類のそれだろうが、そんなことよりその細部、ディティールを楽しめばいいのである。
 主人公の刑事が足に使っているのがボルボのワゴン。それが鉄ホイールだったり、向こう側に旧いサーブが停まっていたり、敵側の資本家というか資産家が使うそれが新しいBMWやメルセデスだったりするところが対比である。
 740、床まで踏んでもあんな加速はしないよな。
 グロックと11.4ミリの拳銃。多分コルトのガバだろう。主人公がそれを使っているというところもセオリーである。
 深夜TVでこうした作品が流れていた時代もあったが、今はどうなのか。
 その辺の事情には疎くなっている。