助六由縁江戸桜 4.
 
 
 
■ 大門をずっとくぐる時、おれが名を手の平へ、三遍書いてなめろ。
 一生女郎に振られるということがねえ。
 
 
 
■ 花川戸助六こと、曽我五郎時政の台詞である。
 江戸紫の鉢巻をしめた助六が吉原の三浦屋にあらわれると、一斉に花魁衆が吸いつけ煙草を差し出す。
 いい気なものなのけれども、このいい気さを味わうのが芝居というもので、いくつもの見得のかたちを眺めては、なんとなくめでたいような気になってしまう。