男の老け方 2.
 
 
 
■ ある作家が、60歳になった時に車の運転をやめたと書いていた。
 羽田トンネルの緩やかなカーブを、思った通りのラインで走れなくなったからだという。
 モットモラシイな、格好いいな、と数秒だけ思ったものだ。
 いつだったか仕事上資料を集めていると、ある月刊誌にその作家の方が載っている。
 Eクラスのハンドルを握り、今まさにバックしようとしているお姿である。
 その方は当時で還暦から10数年経っている。
 
 
 
■ 無論、エンジンはかかっていなかったのかも知れない。
 求められて撮られただけなのかも知れない。
 商売というのはそういうもので、こうした例はいくつもあるし立ち会ったりもしたものだけれども。
 例えば自分の身内であったり家族であったりを晒し、それが許されるかのような伝統というのがこの国にはある。