夜のタンゴ。
 
 
 
■ 腐りかけのマセラティを大事にしている方がいたとする。
 資本が変わる前の、電装部品などがぐたぐたの奴だ。
 ダウン羽織り、顎の尖った光物が目立つ妙齢を乗せ、いやぁ壊れて壊れてと口にするようなタイプではない。
 やや高級とされるスーパーの駐車場に降り立って、後部座席から私立の制服を着た子どもを降ろしてくるようなタイプでもない。床にゴミ捨てんな。
 つまり一生懸命なのは野暮なのである。 
 
 
 
■ 私は庭に出かけた。
 くぐり戸を抜けて銀杏の葉が積もっている辺りに入る。
 ライカの古い奴に50をつけていて、すこし考えて1枚だけ撮った。
 キャノンやニコンに比べると、ライカのレンズの絞りの感触は今ひとつである。