Tango Notturno.
 
 
 
■ タンゴを流しながら、庭を眺めていた。
 今年はパーティの数がやや少なく、遠慮させていただいたものもいくつかあった。
 震災のせいばかりともいえないが、薄く近く、そうした気分というのは沈み込んでいる。
 友人の映画監督と飲んだ時、奴がここは産地が記載されているんだと自慢していた。
 味は今ひとつだったけれども、そうしたものに拘る気分はわかる。
 無茶な30代を送って、一度相方と離れ、身体を壊して復帰した男だったからだ。
 私はそこで、へい監督と呼び、万年ADの役柄をしていた。