赤いグラス 2.
 
 
 
■ しばらく前カラオケを歌った。
 都心部の、ここは日活ロケ地の果てかというような酒場で、そこには猫がいた。
 孫娘のような妙齢前半を連れた紳士が、裕次郎を歌っている。
 地方都市のどこでも見られる光景だが、相方の素性はしれない。
 
 
 
■ マイクがいたしかたなく廻ってくる。
「帰らざる波止場」の映画版があったので、私はそれを選んだ。
 キー下げてねと頼んだのだが、ちょっとばかり声がかすれる。