Pick-up on Noon Street (1936)
 
 
 
■「ヌーン街で拾ったもの」
 という題は、それ自体が詩に近いところがある。
 即物的で、その癖含みが残されていて、短編を読み終わった後、おかしな余韻が残るフレーズである。
 
 
 
■ 例えば「女を拾う」という表現に随分と前、違和感を表されたことがあった。
 拙作「夜の魚」の中の一節についてである。
 その方は大学の先生で、真面目でしかも浮気に憧れる、とてもいい方だった。
 いや先生、実際落ちているんですよ。
 と何度か言ったが、実感としてそういう話は理解しがたい。フェミニズムの観点から、わたしには認めがたいところがある。
 と、自説をお曲げにはならなかった。
 それじゃ君、磁石を腰にぶら下げて歩いていると女が付いてくるというのかね。
 砂鉄の話にすりかわっている。