さらば冬のかもめ 5. 
 
 
 
「現在、福島県は大きな岐路に立たされている。福島県の明治以後の歴史を振り返れば、戊辰戦争の敗北により『白河以北一山百文』とまでいわれた蔑視と差別の構造からの脱却をひたすらめざしたように思われる。しかし一度『賊軍』の汚名をきせられた福島にとって容易なことではなかった。
自由民権運動は(略)それが敗北に終わったとき、国の政策に積極的に協力することによって地域の発展をめざしたのは必然であったのかもしれない。
河野広中の転身は民権運動からみれば裏切りであったが、国家の基本路線が確定した状況のなかではおそらくは苦渋に満ちた一つの選択でもあった」
 
「21世紀を目前とした現代福島はどうであろうか。『脱東北』『中央連結』をめざして開発政策をとってきた姿勢はすでに過去のものになりつつある。それぞれの地域から直接ほかの地域や世界と結ぶことができる現在ほど、地域のあり方が問われている時代はない」(前掲:295頁) 
 
 
 
■ 書き写していると、これが1997年に発刊された本であることを意識してしまう。
 車や単車の世界では、10数年などというのはたいした問題ではないが(一部マニアのお話です)、生まれた赤ん坊が思春期に入りかけるだけの時間が過ぎたのだと気づく。
 皮肉な見方かもしれないが、ある観点からは、直接世界と結べたところもあった。