春の雲。
 
 
 
■ あるとき私は空港にいた。
 所用がすむと車を取りにいき、それから脇道に入って暫く進んだ。
 中で飲めばいいものを、埃っぽい自販機に近づく。
 半分が売切である。
 昨日まで暖かかったのに、外は寒い。
 
 
 
■ 私は雲を見ていた。
 廻りにはフェンスがあり、放り出された建材や錆びたドラム缶のようなものがある。
 正確にはなんと呼んでいいか分からない、瓦礫手前の風情である。
 
 
 
■ トラックが近づいてきて若い男が自販機に缶を詰め始めた。
 彼はややふくよかで、髪を半分に分け、見るからに憮然とした気配で仕事をはじめる。 一日いくつ廻るのか。
 尋ねることもなく、暖かくも冷たくもないコーヒーを売ってもらう。
 雲の中、双発のヘリが着陸の態勢に入った。