夕立は誰のおかげか。
 
 
 
■ 梶山さんは半島出身だった。
 晩年になり、祖国と日本をテーマにした大河小説を書こうと試みたが果たせなかった。
 友人の山口瞳さんの「男性自身」には、その辺りの経緯が書いてある。
 サービス精神が旺盛すぎた。男気が強すぎる。筆が荒れた。
 元に戻すには、周辺を切らねばならない。
 
 
 
■ 山口さんの「英雄の死」は、今読むと哀切である。
 20数年ほど前に買ったものが処分できず、まだ棚の中にある。
 山口さんはそれ以後どうも書けなくなって、水彩画や旅物の方に流れたのだとご自分で言われてもいた。