水晶。
 
 
 
■「駅前旅館」のラスト・シーンは、甲府の閣への畦道である。
「夫婦善哉」でコンビを組んだ扇さんが、森繁さんの後を追いかける。
 出来すぎなのだけれども大衆映画としてはそれが正しく、その後本作は駅前シリーズとして半ばご当地映画となっていく。
 
 
 
■ ここで思い出すのは、つげ義春さんの確か「池袋百人会」(うろ覚えなので、そこは流れで)という作品である。
 当時の徹底した貧乏と、浮き草のような勧誘員と、前髪を伸ばしたインテリの入り婿に見事に騙されていく半グレ妙齢本格派の姿がユーモアと、適度な色気を保って描かれていた。
 つげさんの作品、そのラストは「駅前旅館」を下敷きにしていたのかも知れないと、個人的には思っている。