月山 3.
 
 
 
 夜は全く明け放れた。時計を見るとまだ五時半にならぬ。空は晴れて淡紅色を含んだ灰色である。行手の峻嶺が頂上僅かに日光をうけてほつかりと赤くなつて居る。
 
 
■ 長塚節さんの「月山」については、実はまだ読み込んだことがない。
 私は、という替わりに「余は」と記載するのであるが、豪農の子弟として生まれた彼が、異文化への旅に出るという自意識の過程と、子規ゆずりの写実描写がおそらくは要だろうか。