シングルモルトの夜だから 2.
 
 
 
■ ある中堅都市に、赤いチョッキを着たバーテンダーが経営するバーがあった。
 何度か、その街に住む友人の案内で通ったことがある。
 親父さんはいわゆる鳥巣バーの頃からの生え抜きで、その都市の花街界隈の話はほとんど網羅していたが、それを口にすることはなかった。
 いつだったか、マンハッタンを頼んだ。
 ベース、何がお好みですか、と尋ねられたが、おまかせしますと下駄を預けた。
 
 
 
■ 出てきたものは、ヨーロピアン・スタイルのグラスである。
 赤い例のあれは結構甘く、ステビアかサッカリンのような味がしたことを覚えている。
 旨いのか、と言われれば確かに旨い。
 当時私はキャノンのFDレンズを常用していて、セルフタイマーにして一枚撮った。