葉子とすれちがう_6.
 
 
 
■ 「夜の魚 外灘」vol.159 にこういう場面があった。ラストである。

 葉子は集合住宅の暮らしが気に入ったようだった。まだ上海にいる。皺だらけの老婆とともに買い出しに出かけ、しゃがみ込んでは女達と洗い物をした。自由市場の雑踏の中で、大きな口を開けて笑う姿をみていると、それでいいのだという気がしてくる。隣人の気配と人いきれのこもる集合住宅の闇の中で、私たちは膏薬を貼ったまま何度か交わった。
 今頃、上海には江菫が着いているだろう。江菫は日本で働く北京からの留学生と恋に落ちていた。姉を訪ねるということで、一昨日成田を離れたのだ。