ミンクのてざわり。
 
 
 
■ なんのせいか、私はケーリー・グラントが好きである。
 どちらかと言えば、第二次大戦後の作品。
 ヒッチコックの「泥棒成金」辺りから、グラントは別物に化けたような感じもある。
 
 
 
■ ドリス・ディと共演した「ミンクの手ざわり」は1962年。
 グラントは半分白髪だが、NY五番街の高層ビルからドリス・ディを追いかけ、腰にバスタオルを巻いたまま真剣な表情で出てくる場面は忘れがたい。
 ハリウッド特製二枚目半。と評したのは、我が国映画評論の大先達の方だが、言いえて妙な指摘だった。
 
 
 
■ 今も昔もそうなのだが、NYという街は貧富の差が圧倒的だった。
 ブロックひとつ隔てると、例えば肌の色が異なり、路上に置いてあるフォードかシボレーの凹み具合が違っている。
 イエロー・キャブ、その運転手の言葉が片言だった。