着流し。
 
 
 
■ 深夜、外苑西を昇っていると、一台のアストンが停まっていた。
 やや腰高の尻を見せた、6気筒のDB7。ジャガーのXKとプラットを共有した、そろそろネオ・クラシックの範疇にある車である。
 味は薄いとされるのだが、その分普段乗りにも適しているとされる。
 
 
 
■ 鋭角に曲がって坂道が続くこの辺りには、奥まったところにちょっと変わった車が棲んでいる。
 かといって20年前の青山原宿のように飛ばしている訳でもない。
 中ほどにある店の前には、平日の深夜、派手なランボやベントレーなどが停まっていて、車を眺めながらノンアルコールのビールを飲みにくる方々が集っていた。
 ある種、自慢スポットであろうか。
 椅子もテーブルも埃っぽいので私は近寄らないのだが、花束を抱えた妙齢が踊るように歩いているのは、式の二次会があったからである。
 
 
 
■ 薄いメタリックの古いアストン。
 維持費は多分空冷の911を真面目にメンテしたくらい。
 12気筒ではないから車の格としては別物になる。
 魚眼レンズのような流行の腕時計は似合わず、路上駐車でちょっとラーメンを、という訳にもいかないだろうが、やはり嫌いじゃないのである。