■ 私は惚けたような顔で立っていた。真壁の顔をみていて自分もそうだと気付いたのだ。
「自衛隊に入ろうかな」
「歳だからダメよ」
 葉子はドアの千切れたバンの傍にゆき、倒れた若い男の手当をしている。中国語で何かを話している。男の顔は二十歳を幾つも出ていない。
 それにしてもと真壁が言う。まるで戦争ですね。
「これは北朝鮮なんかでも使っているBTRー四〇という水陸両用の上陸艇です。もしかすると軍が絡んでいるのかも知れない」
 真壁の言うとおりだった。横転し燃え続けている装甲車の腹の底には小さなスクリューが付いていた。デフが前後に突き出ている。
 一介のテロリストがこんなものを用意できるとも思えない。そうとは言え、こちらも対戦車バスーカで応戦している。
 
 タイアの燃える匂いの中に生臭いものが混じっている。
 走羽が放ったランチャーで北沢の配下が二人死んでいた。手足は千切れていないが、破片が躯を貫いたのだろう。装甲車の運転手もうつぶせに倒れている。
 肩に挟んである無線機が鳴った。早く降りてくるよう走羽にせかされる。
 私は倒れているバイクを起こした。肩口と脚から血を流し、座り込んでいる若い男が私を見上げた。葉子が彼の脚の付け根をベルトで巻き、止血している。彼は親指を立て私に笑ってみせようとした。
 
 バイクのエンジンがかからない。キックを繰り返しても手応えがない。
「キル、キル」
 若い男が首を振って言う。スロットルの傍についたキル・スイッチがオフになっているのに気付かなかった。ガソリンコックを押し下げキル・スイッチを指先で直すと、甲高い音でエンジンがかかる。
 私は若い男に親指を立て、上着を脱いだ。イングラムを肩から下げ、バイクを地下への入口に向けた。入口の傍には走羽の手下が踊るような格好で死んでいる。