■「お酒、ぬけた」
 葉子が入ってきた。
 葉子の尻を抱きながらソファの上で暫く浦東の夜景を眺めた。
 簡単な食事をし、コーヒーを二杯飲むと躯が甦ってくる。
 真壁から連絡が入った。例の上司は午後の便で上海にきたという。
 十時になった。地下二階にある駐車場に降りた。一番奥まったブロックはシャッターで閉鎖されている。内側にある扉から中に入る。
 走羽がきていた。相変わらず黒の上下を着込んでいる。シャツも黒い。
 簡単な地図を広げ、走羽が説明した。
 
「入口はひとつ、ゲートで封鎖されています」
 電視塔の傍の建築中のビルは、夜になると当然封鎖される。廻りは高い鉄のフェンスで覆われ、中で何が起きているかは道路からはみえない。朝鮮国籍だという走羽の配下、髪の短い男が明け方確認にいったのだ。
「見張りは入口にふたり。武装しています」
 それをどう倒すかが問題だった。
 シェルターは地下三階あたりにある。地下二階の半分がそうなっている場合もある。我々がいるこのビルも、駐車場の一番奥の通路がシェルターへの入口になっている。葉子が図面を確認していた。普段は人目につかないよう、それといった印はついていない。機械室の脇からそのまま下に降りてゆく仕組みになっていた。
「見張りはわたしが誘いだすわ」
 葉子がそう言った。走羽がうなづく。私は逆らわなかった。
 ボックス型のバンから何箱かのダンボールが降ろされていた。周囲はアルミで補強され、鍵はかかっていない。私はそのひとつに近づいて中を開けてみた。