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列島いにしえ探訪 Poster Top
興福寺
青瓶 2460

「列島いにしえ探訪」
- 奈良へ -



■ 大阪で、デザイン会社社長に昼飯をご馳走になった。
松岡正剛さんが主催する「編集学校」で知己を得、それ以来時折やりとりさせていただいている方である。
  雑誌「大阪人」を前に、二時間ほども大阪の地理と文化について、あれこれを話す。ご教授願うと言った方が適切だろう。
 これから奈良へゆくというと、電車への入り口まで案内してくれた。
 私は撮影機材をゴロゴロと転がし、後に従う。男同士というのはおかしなもので、ついてゆけば間違いがないだろうという気に、既にしてなっている。
 奈良までの電車は、どことなく微細な色合いだった。
 これは私鉄だからだろうか。廻りに広がる風景もまた、尖ることもなく緩やかで平坦である。
 私は、女学生の制服の色を眺めながら、外の風景にぼんやりとしていた。



■ 奈良の駅につくと、入江泰吉(1905-1992)氏の写真があちこちに飾ってあった。外に出ると、修学旅行だろうか、ロータリーの廻りに学生服の子供達が座っている。集団で、髪の毛も短い。その後ろに東大寺の大仏の写真がポスターとして貼ってある。ご開帳なのか。私はその対比を、胸ポケットから小型カメラを取り出して撮ろうとした。
 背広姿の40前の方が、「ほら、おまえら脇によれ」と声をかけている。
 その方も、植え込みのところに座り込んでおられる。引率の先生なのだろう。
 私は頭を下げ、バスとタクシー乗り場の方へと歩いた。
 ランドセルを背負った、すこし小柄な子供がバス停のところに遊んでいる。
 眺めていると、すこしばかり障害のある子であることが分かる。今が下校時間なのだろう。大きな目で上を見たり下を見たりしている。子供はバス乗り場の前列に座り込んでいた。
 私は小型カメラで、その子を離れたところから撮った。顔が分からないようにタイミングをはかる。
 そうしたとき、一体、カメラを持っているからといって、どこにもそんな権利はないよな、と何時も思う。実際、何かに使えたためしもない。



2002_11_10
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「列島いにしえ探訪」読売新聞大阪へ

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