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このページは製作過
程のイメージをあらわ
すものです。

実際の「YOL関西」は
こちらです。

■物語の効用

 JR東日本の広告コピーに、「その先の日本へ。」というものがあります。
 東北へ伸びる新幹線。その切符を売らなければならない。
 コピーは秋山晶さん。
「男は黙ってサッポロビール」、キューピーマヨネーズの一連の野菜シリーズな ど、数々の名作を手がけたコピーライティングの大家です。
 この方のアイディアスケッチにはこのようにあります。
 秋山先生、失礼を承知で引用させていただきます。



東京:
変化・不安・興奮・緊張・過密・アスファルト・ビル・ネオン・ノイズ・サイレン・情報量大
東北:
不変・安定・沈静・弛緩・過疎・田んぼ・森・星・静寂・風の音・情報量小

「それは東京の人が想像する東北で、現実は違うだろう。しかし、そのイメージ 通りの表現をすれば『こことはちがう場所』になるはずだった」
 と、秋山さんは書いています。

 例えばその本文、ボディ・コピーは以下のとおり。

 雪が下から上へ降っているように見えた。
 岩礁に散る波が気泡になり、断崖に吹きつける風に舞っている。
 北緯40度。男鹿半島。
 海に向かう広大な斜面は野生の芝に覆われ、午後2時の影はすでに長い(略)。
 断崖は映画「ライアンの娘」を思い出させた。
 アイルランドもこの半島も、北の風景は、よく似ている。
 秋田駅長、遠藤鉄宏。
「私は男鹿市の北浦に生まれました。いま、私が立っているところは、子どもの 頃によく来た場所です。海も灯台も、あの頃のままです。
秋田-男鹿は列車で約1時間。訪れた方は、想像した以上の風景だ、と言われます」

(秋山晶の仕事と周辺:六耀社刊:2000年4月25日発行:94-95頁より引用)。



 JR東海ではなく、東北を走るJR東日本。
 京都や奈良のようなメガ・スポットはひとつもない場所です。
 そこをこのように表現する。
 結局は外部、余所者の視点。
 やや距離をおいた、醒めた眼によって対象を相対化している。
 それによって、その対象(この場合には土地、あるいはそこに棲むひとの暮ら しですが)そのものを浮かび上がらせている。
 それが、今ここではない場所への憧れとなって、読む者を魅了する。
 つまり、そこにはある種の物語性があるからです。
 自分でもいってみようかと思う。
 結果として、広告としての着地点が確かに確保されています。
 また、やや仔細な分析ですが、この場合、メインとなるキャッチコピー「その 先の日本へ。」に、読点、丸がついていることに注目してください。
 日本語の記述そのものにも、物語性が含まれているのです。
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読売新聞大阪本社

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