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●ご注意
このページは製作過
程のイメージをあらわ
すものです。

実際の「YOL関西」は
こちらです。

■「藍より出でて」

 深夜、薄い酒などを嘗めながら、様々にレイアウトしておりました。
 問題はベースの色です。
 ニュース、文章そのものをレイアウトするにはやはり白が基本です。文字の 黒が適度なバランスをとってくれて、眼に穏やかになる。
 ですが、文字の少ない表紙において、背景を純粋な白、あるいは乳白色にす るとどうも眼にきつく見えてしまう。
 これには理由がありまして、モニターから出てくる光というのはWindowsの 標準で、大体9300〜9500ケルビンなんです。ケルビンというのは色温度の単位 です。
 ですが、プロというか専門の分野では、写真や画像を加工するにはおおむね 6500ケルビン。DTPなど、紙を前提とした場合には5500ケルビンにモニターの 色温度を調整し、色あわせをすることになっています。
 一般の読者のモニターが、5500や6500ケルビンに調整されているとはほぼ思 えない。どうしても蛍光灯を眺めているような青白い光になってしまう。

 私は思い切って紺青を基調にすることにしました。
 藍色です。
 藍というのは、日本人にとって非常に馴染みのある色です。
 ご存知の通り、タデ科の一年草から作られた色でありますが、藍甕(あいが め)で染める度に色は濃くなってゆきます。
 筑波問答にいわく、
「あいより出でてあいよりあおく、水より出て水より寒し」(14世紀後)
 鴎外の「うたかたの記」にも
「そのおもての美しさ、濃き藍色の目には、そこひ知らぬ憂ありて」(1890)
 漱石の「虞美人草」、荷風の「珊瑚集」などにも記述があります。

 さらに日本人は、色のヤレ方に対しても独特の感性をもっています。
 ヤレ方とは、すこし枯れたような感じとでも言えばいいでしょうか。
 鮮やかやな原色もいいのですが、それがすこし古びてきたようなところ。
 そこにも味を見出します。簡単に言えば、「ワビサビ」であります。
 例えば、上下の四角いブロックには「瑠璃色」を配置しました。
 そのままですと、たいへんに鮮やかですが、毎日眺めるにはややきつい。
 ですので、色の透過度を変えてゆきます。ほぼ、紺の一種とでもいうような ところにきたときに、そこで止めました。
 ベースになる色が藍ですから、そこに透明な色付きの紙を置いたというよう な感じになります。

■感性の遺伝子

 使用する文字などには、あまり凝ったものを使いません。懲りすぎると野暮、 関西の言葉でいうと、「スイ」はなくなるからです。
 今回、担当責任者の方とご相談の上、表題名が「サイバー古代」から「列島い にしえ探訪」と変わりました。コピーライターというのはネーミングも行なうも のです。ここでのポイントは、「いにしえ」というひらがなの響きと、そのかた ちです。
 文字そのものに美しさがあった方がいい。
 仮に、サイバーとカタカナを置く場合、背後のデザインそのものも変わって くるでしょう。グリコの看板のようになるのかな、と思っております。

 英語訳を配したのは、モダンさを出すためです。
「ワビサビ」は必要だけれども、渋すぎてもいけない。
 基本的に直線で校正しているのは、新聞社にふさわしい端正さを表現したかったからでした。

 私達が日本的であると感じるものは、様々な文化の影響を受けた歴史の総体 です。「感性の遺伝子」とでも言うようなものがある。
 ある種の色やかたちを眺めたときに、ちらりと思い出される記憶の断片とで も言えばいいでしょうか。
 個別的でありながら、どこかしら普遍的なもの。

「柄は悪いかもしれないが、品はわるくない」
 吉行淳之介さんにそういう言葉がありますが、そうしたデザインができれば と思っておりました。
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読売新聞大阪本社

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