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このページは製作過
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すものです。

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こちらです。

「緑色の坂の道」 2417
いにしえの色 2。

「列島いにしえ探訪」(ヨミウリ・オンライン関西発)
http://osaka.yomiuri.co.jp/kodai/index.htm
表紙デザイン、kitazawa-office | 北澤事務所

■ デザインというのは、何かを捨てることから始める。
 時々だけれども、そんな気がしていた。
 梅雨の頃合い、除湿機が唸る仕事場で、私はデザイン用ソフトのカラー部分に、ひとつひとつ色を加えていった。
 基調は紺、あるいは藍。そこから紫に変化してゆく。
 本来、Webでの作業はRGBで指定するものだけれども、くすんだ感じを見るために、当初の指定はCMYKで行う。設定を見直しながら、ゆきつもどりつを繰り返した。

■ 本サイトの読者層は、日本の歴史に興味のある方々である。
 大学あるいは関係機関の研究者。女性の方も多い。
 加えて、昼間の時間帯、学校現場からのアクセスも少なくないという。
 ということは、小中学生なども見ていることになる。
 新聞社、しかも文化的側面の強いサイトという要請から、私は極力普遍的なイメージを想起しようとこころみた。
 端正なこと。
 毎日見ていても飽きないこと。
 こころ疲れたときであっても、神経に障らないこと。
 けれども、どこかで華のようなものがあること。
 何より大事なことは、実際にそれを使って日々の更新作業をされているスタッフの方々が、ある種の喜び・プライドのようなものを持てるかどうかである。
 そうでないと、全体としていい仕事にはならないのだ。
 私は、中公新書の表紙デザイン、そのWeb版を夢想した。

■ 背景は「紺青」、わかりやすく言えば「藍色」である。
 そこに「青紫」の横線を入れる。
 文字はただ「白」。凝ったフォントは使わない。
 電卓を叩きながら、基準線を設定していった。
 上下に配置された四角いブロックは、「瑠璃色」をベースにしている。
 この透明度を変化させることで、色彩のバランスは全くといって良いほど変わってくる。どこで止めるか、ゆきすぎるのか。
 この辺りの按配は、ほとんど文章にすることはできない。
 センスというよりも、知と情、「記憶の総体」のようなものであろうか。
 日本人は昔から「藍」の色に馴染みを持っている。暮らしの中に根付いているともいえ、その微妙な変化には敏感である。
 加えて「紫」は高貴なものとされている。
 色には意味があるが、この辺りは後からの説明になる。
 作業しているときに意識化はされていない。

 数種類をつくる。
 抑えに、一般的と思われる背景が白色のものもデザインする。この辺りは仕事です。
 デモサイトに掲げて、実際に本社スタッフの方々に確認していただく。
 細かい直しが入る。英語の表記は、本企画の担当者の方が調べられたものだが、「EXCURSION OF THE MIND」の部分が、「FOR」であるか「OF」になるのかで、ほんの微かにニュアンスが異なるという。
 結果、原型案、つまり「藍色」をベースにしたものでゆこうと決まったと聞いて、私は少なからず驚いた。
「よく、この色が通りましたね」
「いや、ネットの玄人筋に評判がいいんですよ。格調があるとも」
 この表紙を雛型にして、各頁のデザインが一気に変更された。
 僅か数日である。スタッフの方々も気合が入っている。

■ HTMLの技術的には、とりたてて書くべきことはない。
 今のところロールオーバーも使わず、極めて単純な構成になっている。
 いずれはFLASHなどで動的に映像を加えたり、季節によって僅かに配色を変えてゆくこともありうる。つまり、デザインは更新されることになっている。
 私はこの仕事の最中、美空ひばりさんの「佐渡情話」を聴いていた。
 若いころ、すこしも良いとは思わなかった歌が、いつのまにか傍に立っているということは、ままある。

 青きソフトに降る雪は、すぎしその手か、幻か(北原白秋)
2001年7月



■日本の伝統色

 はじめは大それたことをしようとしてたんですね。
 元々のコンテンツ名が「サイバー古代」ですから、やっぱり古代の壁画だろう。絵巻物などをコラージュしてデザインする。
 ところが、それを試みているとサイズがとても大きくなってしまうんです。
 一般読者のPCに読み込むまでに、相当の時間がかかる。
 毎回毎回、表紙を読むのに時間がかかっていては仕方がない。
 だもので、複雑に画像を配置するのは没であると。やるんだったら、動画的に別の部分に表示する。見たいひとだけが、やや覚悟をしてボタンを押せば良い。
 となると、次なる表現の軸は何か。
 結局色と形になる訳です。それしか残っていないという。

 ここで、色についてすこし語ります。
 1920年代に、ドイツ、ワイマールで、建築家のグロピウスが開いた「バウハ ウス」という学校がありました。「工業技術と芸術の結合」のようなことを主 張していたのですが、そこにヨハネス・イッテンという教授がいました。
 イッテンは「色彩論」という書物を著します。色について、初めて科学的、 合理的に分析を加えた訳ですが、それはさておき。
 先のコラム(青瓶)にも書きましたが、私はこの仕事の打ち合わせの際、も う一冊の本を持ってゆきました。
 読売新聞社が1987年に出して、1996年の段階で十二刷を更新している名著、 「日本の伝統色」(日本色彩研究所編:福田邦夫著)であります。
 それを開き、「どの色がお好きでありましょうか」と担当責任者にお聞きした 訳です。
「やっぱ、白と紫ですなあ」「桔梗の色もいいかな」
 社員食堂の渋茶をすすりながら、そのように歓談というか打ち合わせをして おったのですが、実は私自身も紫系統の色はいいのではないかと思っておりま した。
 また、清潔感を顕すに、白は捨てがたい。
 日本人はどういう訳か白が好きです。
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読売新聞大阪本社

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