一月の雨 2.
 
 
 
■ 盆や正月というのは、薄いかさぶたのようなものがいっとき剥がれてゆく狭間であるような気もしている。
 自分が何処から来たのか、何をしていたのか、本当に好きな食べ物は何なのか。
 というようなことが目の前に突きつけられたような錯覚に陥る。
 であるから、若い頃は少し恥ずかしいものだった。今もその気配は残る。
 おふくろの作った雑煮の味が、身体の中に染み込んでいる。
 三角の握り飯を作るのが下手で、いつも丸いそれだったりした。
 懐かしさというのは、時間である。
 あるいはその時に見た、単なる風景であったりもした。