行方 2.
■ 行方というのは、流れのことである。
「流れる」
というのは、幸田文さんの名作であるが、そういった腰の据わった文章とか妙齢後半に会うことは少ない。
何故かというと、おそらくはその父親が偏屈でなかったからだろうと思っている。
■ 仕事で関わったことのあるバーにいくことがあった。
バーというのはつまり、ブルーラベルなどが置いてあるそれで、氷が丸かったりするところだと思っていただければ良い。窪みのない氷である。
男たちは酒というよりもカウンターの中にいる男や女に会いにゆくのであって、半分は色気だが、それだけでもないところが酒の気配の不思議なところだった。
■ いたしかたなく、テッテ的に飲む。
今夜は帰さないわよっ、という台詞は「さあ付き合え」というようなものであって、「水しかでねえよ」と言いながら歌舞伎町の界隈まで流れた。
親のこと、故郷のこと。子供の頃に別れたままの父親のこと。
おっかさん、身体の按配どうなんだい。
それがさ、あたしってさ。
しかし君って、日本酒嘗める時にトカゲとか言われない?
ちょっとこっちいらっしゃい。