港町十三番地。
 
 
 
■ 冬になると美空ひばりさんの曲を聴くことが多い。
 ま、冬に限ったことではないのだが、いわゆる小麦粉の沢山入ったカレーライスか、カツ丼とビールを頼みたくなるような気分の時。と言えば分かりやすいだろうか。
 ライスカレーでもいい。
 
 
 
■ ナーガイ旅路のコーオカイ終えて
 と、朝方にPCの前で低く歌う中年男というのは、誰かが見ていれば気持悪いだろうが、今この部屋には誰もいない。
 楕円形のショット・グラスでサントリーを嘗めている。
 ひばりさんは、この歌の出だしを、薄く笑うようにして歌っていた。
「佐渡情話」とはある種対極にあるようで、海峡の底の流れは繋がっているというような歌い方である。
 
 
 
■ 当時、船乗りというのは粋な仕事の代表だった。
 日活映画に何度本牧埠頭が出てきているか、彼らは香港へゆき、上海へと廻る。
 ドルが360円で、沖縄のひとたちはパスポートが必要だった。
 どういう訳か知らないが、私はひばりさんを聴いていると川崎から横浜の外れ、そしてその先の国道へ車を流したくなる。
 時には山口百恵さんに代わることもあるが、まだ川崎の界隈だとそうでもない。