程のよさ。
 
 
 
■ ひとつの技術を追求することがその人間の成長を促し、社会的にも成功してゆくというジャンルの物語があった。これは教養小説と呼ばれている。
「宮本武蔵」などがその代表なのだが、この作品は戦時中、軍人の精神修養のモデルとして人気を博した。
 実際に、武蔵が社会的に成功したかどうかは別にしてである。
 一方で、技術を極めることが人間的には破滅の道に繋がるという世界もあって、これは「麻雀放浪記」などに代表される。
 なぜなら、博打というのは勝ち続けることができないからで、その世界を続けてゆくことは、ある意味で負けることに麻痺してゆくという側面があるからだ。
 何かを削ることで成立する世界というものもある。
 
 
 
■ 表現をする際、時々そういうことを考える。
 細かな技を売っているのではなく、特性は別のなにものかであるという自覚だろうか。
 それを支えるものが、水面下の技術なのだが、いいところまで見たら後は忘れることにしている。